コンディショニングガイド 第12回
今回はHMβという比較的新しい素材についてです。
HMβはアミノ酸の一種であり、別の表現をするならば進化型のアミノ酸といってもいいかもしれません。
正式にはβ-ヒドロキシ-βメチル酪酸というもので、BCAAの中のロイシンが体内で5%ほどHMβへと変換されていきます。
元々BCAAの効果の中心はロイシンであって、たいがいのBCAAサプリメントではロイシンがもっとも多く配合されています。
ところがロイシンだけを摂取すると、体内でアミノ酸のインバランスという状態が起こり、ロイシンが本来の効果を発揮してくれません。
インバランスとはロイシンだけがたくさんあるために、他のアミノ酸があたかも足りないような状態になることで、BCAAや必須アミノ酸のようにバランスが大切なアミノ酸にとっては、量は足りているのに効果が十分ではないということになってしまいます。
そこで通常はロイシンのほかに、バリンとイソロイシンを一緒に摂取してバランスを摂っているのです。
その点、HMβはロイシンの代謝産物ですから、バリンやイソロイシンの力を借りずともBCAAに近い効果を発揮することができます。
この場合のBCAAの効果とは筋肥大や筋肉の超回復といった効果を指します。
実際、アスリートを対象としてだけでなく、サルコペニアの予防や改善といった高齢者の筋力維持を目的とした研究も盛んに行われています。
高齢者の場合はハードなトレーニングは難しいので、筋力の維持を目的とした場合に栄養面での介入に軸を置かなくてはなりません。
これまでも、BCAA、クレアチン、必須アミノ酸、ホエイプロテインなどの多くの素材が研究されてきていますが、HMβはかなり有力な候補の一つとなっています。
有効推奨量は2g/日とされていて、BCAAと比べて少量で済む点もメリットといえるかもしれません。
ではHMβのデメリットは何かあるのでしょうか?
デメリットとは言えないかもしれませんが、BCAAそのものの効果があるわけではありません。BCAAに期待する効果は、筋肥大や超回復といったものの他に、グリコーゲンが枯渇しそうな時には筋肉のエネルギー源としても使われたり、血漿中のトリプトファンをおさえこむことで集中力を維持させたりと、アスリートにとってはこの上なく有難い素材であります。この中の、筋肥大といった効果に関してはHMβの期待は大きいのですが、他の二つに関してはBCAAでなくては効果が期待できないのです。他には素材の段階での臭いが苦手な人がいたり、まだ新しい素材が故に純度を測定した際の完成度が他のアミノ酸と比較した際に低かったりもします。
とはいうものの、すでにサプリメントとして販売もされていますから、一度試してみる価値はあるかもしれません。
個人的には減量期の最後の方でHMβを試して際に、通常どんどんと萎えていってしまう筋肉がしっかりと維持できたという実感がありました。
今後、引き続き注目をしていくべき素材のひとつだと思います。
『コンディショニングガイド』
15年以上、サプリメントを作って、使って、指導してきた、
サプリメント活用のプロが責任編集