2018年1月 のアーカイブ

第26回 アミノ酸のD体L体の話

2018年1月18日 木曜日

 

今回はアミノ酸のD体L体についてです。
 
実はアミノ酸にはD体と呼ばれるものとL体と呼ばれるものが存在します。
 
例えば通常私たちがグルタミンと呼んでいるアミノ酸は、L体のグルタミンです。体内で利用されるアミノ酸は基本L体のみなので、表示上もDとかLを省略して、そのままアミノ酸名を書いてあるケースもあります。
 
実際D体のアミノ酸は食品として認められていないものが多いため、サプリメントとしては使いたくても使えないですし、体内で利用されないため、使う意味もありません。
 
唯一の例外はグリシンで、4つの手をもつ炭素原子のうち2つの手を水素(H)と繋がっているためD体とL体の区別がありません。
 
しかしそれ以外のアミノ酸には鏡に映ったもう一つの自分のように、もう一つのアミノ酸が存在します。
 
そんな利用価値の無いとされてきたD体のアミノ酸ではありますが、最近少しニュアンスに変化が見られます。
 
元々世の中に存在していて価値のない物はないはずだとの理由から研究が続けられ、一部のD体のアミノ酸には肌の活性化やホルモンの活性化などの役割があることが分かってきました。
 
またD体をL体にする酵素も存在し、アラニンというアミノ酸の場合はD-アラニンがL-アラニンへと変換されたりします(その逆もあります)。
 
アラニンはブドウ糖がなくなってきたときに、一時的にブドウ糖を補助するためにアミノ酸であるにもかかわらずブドウ糖へと変換してくれるアミノ酸です。
 
通常アラニンはDLアラニンというD体とL体の混合物が食品として扱えるアミノ酸でありますが、このD-アラニンも体内で酵素(アラニンラセマーゼ)によってL-アラニンへと変換されるようです。
 
まだまだ奥が深いアミノ酸の世界であり、人体の世界であります。

 


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※画像はイメージです。


第25回 トリプトファンの話

2018年1月4日 木曜日

 

 
必須アミノ酸は全部で9種類あり、この9種類はすべて必要でありますから、何か一つでも欠けていた場合には、体タンパクの材料としては理論的には意味をもたなくなってしまいます。
にもかかわらず、特に海外製品の総合アミノ酸などではトリプトファンが配合されていないものをよく見かけます。何故、必要な事が分かっているのに配合されていないのか?その前にトリプトファンとはどんなアミノ酸なのか?
 
今回はトリプトファンについて詳しく解説します。

 
トリプトファンは分子式にベンゼン環を持つ芳香族アミノ酸で、牛乳から発見されました。一般の食材としては、牛乳以外にも肉・魚などのタンパク源はもちろん、アーモンドなどのナッツ類、納豆、豆乳、バナナなどにも含まれているといわれています。
 
トリプトファンは、脳内神経伝達物質であり精神安定剤として利用されているセロトニンや、規則的な睡眠のリズムを整えるホルモンであるメラトニンをつくる材料となることから、睡眠を助けるアミノ酸としても知られています。このうちのメラトニンは生体リズムの調節をおこなうホルモンで、メラトニンの血中濃度と睡眠は深く関係があります。またセロトニンは神経間のシナプスからシナプスへと情報伝達をおこなう物質です。このセロトニンという物質は、心がほっと落ち着いた時に分泌されるホルモンで、興奮した時に分泌されるアドレナリンの量を減らします。そのため、強まった興奮にブレーキをかける役割があります。セロトニンが減少し、興奮や気持ちの高ぶり、不安を和らげることができなくなった状態が抑うつ状態ですので、セロトニンの量を増やして代謝を遅らせることによって、一部ではうつ病の治療薬としても使われています。
 
その一方で、セロトニンは長時間の仕事や運動を行っていると生成されて脳内の濃度が高まることから中枢疲労と関連があると言われています。そして、疲労の軽減や集中力の維持にはBCAAが必要であるといわれます。
 
トリプトファンを脳内に輸送する場合には脳血液関門を通らないといけないのですが、BCAAもこの同じアミノ酸輸送体を介して取り込まれるため、これらのアミノ酸は脳内取り込みに際しては競合関係にあります。つまりトリプトファンとBCAAのどちらかを多く運べばもう片方を運ぶ量は少なくなるというわけです。そのため総合アミノ酸から集中力を維持するためにセロトニンに変換されるトリプトファンを抜いたという説明を受けることがあります。
 
しかしながら、トリプトファンがサプリメントに入っていないもうひとつの理由は、外国ではトリプトファンの添加が認められていない時期があったのです。これには1980年代後半に起こったに「トリプトファン事件」と呼ばれる出来事が原因となっています。上記のような睡眠導入の作用から、1980年代のはじめにアメリカでトリプトファンを含んだ健康食品が爆発的に売れました。しかし、80年代後半にある健康食品を摂取した人について血液中の好酸球の急激な増加と激しい筋肉痛を伴う症状があらわれ、最終的には38人の死者と6000人近くの患者を出す健康被害事件が発生しました。それらの健康食品にはある原料メーカーが製造したトリプトファンが使われていたことが分かり、大きな訴訟にまで発展しました。この原因としてはトリプトファンの製造を菌からの発酵法で行っていたのですが、生産効率を上げるために遺伝子組み換えを行った菌を使用したことで不純物の毒素が混じったということでした。ただ、この事件をきっかけにトリプトファン自体のもつイメージは大きく下がりました。アメリカでは法律によってサプリメントにトリプトファンを入れることができなくなりました。(現在では「栄養添加物」という区分けで添加が認められています。)そんな経緯もあり、海外製のアミノ酸サプリメントにはトリプトファンが入っていないことが多いのです。そして、メーカーによるトリプトファンが入っていない説明として、上記のようにセロトニン合成の原因となりリラックス効果があるためスポーツには適さないアミノ酸であったり、BCAAの吸収を阻害するため筋肉に良くないなどといった言葉がつけられていると考えます。

 


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